た-くんの狂人日記

最近はほぼ読書日記

悪の製薬

悪の製薬: 製薬業界と新薬開発がわたしたちにしていること

悪の製薬: 製薬業界と新薬開発がわたしたちにしていること

道新書評:http://dd.hokkaido-np.co.jp/cont/books/2-0029258.html
まとめの段落だ、という箇所をデジタル書き抜き。

医薬品は、それを製造する人びとによって、まずい設計*1臨床試験で、あきれるほど数少ない、へんてこな、患者の代表とは言えない患者に試され、治療効果を強調すべく、意図的な欠陥がある手法で分析される。当然ながらこれらの臨床試験は、製造者に有利に働く結果を生みがちだ。企業側は、自分たちの気に食わない結果が出たとき、それを医者と患者から隠す絶対の権限をもっているので、わたしたちは、薬の本当の効能の歪んだ姿しか見えない。規制機関は、ほとんどの治験データに目を通すが、薬が誕生した当初のものしか見ておらず、その場合でさえ、データを医者や患者どころか政府の他の部署にさえ提供しない。この歪められたエビデンスが、のちに歪められた形で伝えられ、適用される。医学部を卒業してから四十年間、医者は実務のなかで、何が効くかの情報を、製薬会社の営業担当者や同僚の医者や定期刊行物から、その場その場の口伝えに聞く。しかしその同僚は製薬会社に―しばしば内緒で―雇われている可能性があるし、定期刊行物も然り。患者グループも。そしてとどめは学術論文だ。これには客観性があると思いきや、じつは企業の社員が素性を明かさず、極秘裏に企画、執筆していることがままある。ときには学術雑誌全体が、一つの製薬会社の完全な所有物になっていたりする。こういうことどもはさて置き、医療界が患う最も重篤でしぶとい病のいくつかにたいして、何が最善の治療手段なのか、わたしたちにはさっぱり分からない。というのも、臨床試験をすることが誰の金銭上の利益にもならないからだ。これは現在進行中の問題で、人びとはその多くを解決すると言いながら、あらかた失敗している。それで問題はみな生き残っているのだが、状況がかつてないほど悪化しているのは、今やみんなが何の問題もないふりをしているからだ。

医療のお世話にならざるを得ない身としては外せないテーマなんだが(言いたいこともあるし)、500 ページ超という厚さに負けたorz という訳で、長編タグ。

*1:デザイン