た-くんの狂人日記

最近はほぼ読書日記

今世紀で人類は終わる?

今世紀で人類は終わる?

今世紀で人類は終わる?

衝撃的なタイトルの本書ですが、著者の基本姿勢は、フランク・ラムゼー*1の以下の言葉:「茫漠たる天空を前にしても、私は一向に引け目を感じない。星は大きいけれど、ものを考えたり愛したりできないからだ。」に集約されます。つまりは、決して後ろ向きな本ではなく、これまでの(自然)科学の進歩を概観し、そしてこの先の展望を考えてみよう、ということになるでしょうか?
本書の中で指摘されていて、僕も大きくうなずいたのは、インターネットは本来多彩な意見や情報に触れて知見を広め、理解と共感を広めるための道具なのに、現状では、逆に(殻に閉じこもって)それをせばめている一面がある、という指摘でした。
まぁ、著者の専門は宇宙論なので、後半は人類が宇宙に進出する話題なんかが多く、前半で指摘していたバイオテロなんかの話が、そういう可能性がある、ということを指摘するだけでサラッと流されていたのは(僕としては)少々不満でしたが。
ただ、そうだよな、と思ったのは、(世界の総人口に匹敵する)60億人が死ぬ確率は5,000万分の1*2って言ったら大したことないように思えるけど、(通常行われるように)この二つを乗じた期待値を計算すると120人ということになって、これはちょっとドキッとする数字ですよね。ま、このように、客観的なはずの数字も使い方一つで与える印象が180°違ってくるんです。
全体的には、最新の科学技術の啓蒙書、といった印象でしたが、まぁ一読の価値はあるでしょうね。

*1:著者の勤務先のケンブリッジ大学(キングス・カレッジ)に在籍していた、数学者兼哲学者。

*2:CERN加速器を10年間稼働したときの大惨事の発生確率、だそうです。そういえば、LHCでミニブラックホールを生成する、っていう話ありましたね。