- 作者: シドニーデッカー,芳賀繁
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2009/10/29
- メディア: 単行本
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ヒューマン・エラーによって事故(本書では、accidentではなくincidentと表現していることが多かったですが)が生じた場合、我々は人間の不注意が事故の原因だと考え、その人間を処罰することによって社会秩序を取り戻そう、とする傾向が強いですが、そもそもヒューマンエラーというのは事故の原因ではなく、システムの欠陥の現れ(症状)であるから、これを取り出して裁判*1で白黒つけようとしても、肝心要の安全の向上にはつながらないんだそうだ。
そうではなく、人びとの安全に対する意識を向上させることこそが、エラーの低減につながるらしい。つまり、安全を向上させるためには、失敗(エラー)から学び、失敗に関する説明責任をきちんと果たすことが重要なのだそうだ。
ま、そらそうだよな、という感じでしょうかね。
でもまぁ、被害者の立場からすると、やはりどこか悲しみ(怒り、かもしれない)をぶつける対象が欲しくなるわけで、でもやっぱり理性的に考えると、そのような対象は見つからないのですね。例えば僕の交通事故を振り返ってみても、制限速度を大幅に超過していた事故相手が悪いのか、と言えば、そうとも言い切れず、信号のない交差点できちんと一旦停止しなかった(らしい)僕にも責任の一端は間違いなくある。*2
だからまぁこの件に関しては、(みんなにとって)運が悪かった、とあきらめるしかないんだろうなぁ、と思っています。ただし、そういうヒューマンエラーによる被害者を救済するシステムの構築、というのは必要になるだろう、と思っている(例えば交通事故の場合は、保険金という形でとりあえずの金銭的負担はかなり軽減されるようになっていますよね?)。