- 作者: 増田悦佐
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2010/08/26
- メディア: 単行本
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全体の主張としては、
アメリカが陥った苦境は、かなりの部分までクルマ社会化がもたらした害毒あるいは罪悪によって説明することができるのではないか(p.39)
というものです。
本書の主張にはいちいち肯*2かされるものが多かったんだけど、やっぱり僕みたいな人間は、第一の罪悪に交通事故の多発が挙げられていなかったのは残念に思う*3。本書でも、事故での死者数は減っている…という感じの紹介にとどまっていたんだけど、詳しく見てみると、その理解は表面的に過ぎないんだな。例えば、このページの二つめのグラフを見てほしい。確かに死者数*4は減っているんだけど、発生件数や負傷者数は必ずしも減っていない。これは何を意味しているか、というと、つまり救急医療の発達などにより命だけは助かるようになった、というだけのことに過ぎないんだ*5。ハイ、ここにその生きてる証拠があります。僕自身、事故に遭うのが十年前なら三途の川を渡っていただろう、と言われた。
もちろん、三途の川を渡ってしまい、全てが終わりになってしまうことに比べればはるかに幸せだろう。しかし生き残ったら生き残ったで、一生治ることのない障害*6を背負って残りの人生を生きてゆくしかなく、それはそれで不便で苦労することなのです(不幸、ではありませんが。障害が不幸に感じられてしまうのなら、それはそう感じさせる社会に問題があるのです)。
なんかたった一つの揚げ足をとったばかりに論点がすれてきてしまったけど、本書の
クルマ社会は表面的には合理的だが、実は非効率
なのだ、という主張はもっともっと多くの人に理解されてほしいと思います。つまりは、こういう負の側面を認識した上で、それでもクルマの持つ利点(好きな時間に、行きたい場所に天候を気にせず行ける。荷物を運ぶことも出来る。)をとるのかどうか、ということです。
ただ全体的に難しい表現も多く、【多士済々】たしせいせいの[意味と使い方辞典]|四字熟語データバンク【一覧】とか、オラ*7でも知らないなぁ、という語句や表現も多かった。もうちょっと、素人向けの新書なんかあったら良いのかもね。ま、多分、新書だと数売らないといけないから、こういうクルマ社会に挑戦するような本は売れない、と判断されるんだろうなぁ。鉄道会社と仲の良い出版社(どこか知らないけど)に挑戦してほしい。とりあえず最低一冊は売れるよ(いや、http://www.f3.dion.ne.jp/~koropo/で宣伝するだろうから、もっと売れるなぁ。で、そうすると自動的にNPO法人 日本高次脳機能障害友の会に伝わるだろうから、日本全国で売れるはず。)。
続いてもう一冊(読みかけだけど)。
*1:あばく
*2:うなづく
*3:もちろん鉄道だって事故は起きるから、交通事故を完全になくすことは不可能でしょう。でも鉄道の場合、まず間違いなく専門家が操作するのだから、事故の頻度を減らすことは可能でしょう。
*4:なお、一般にこういう統計では24時間以内の死亡者をカウントしている場合が多い。参考資料:参考―3 道路交通事故交通統計24時間死者,30日以内死者及び30日死者の状況の比較
*5:あとグラフを紹介しているページが主張しているように、シートベルトの着用も間違いなく効果はある。
*6:障害はリハビリして治せばいい、とか言う人がいるので、その間違いを指摘しておく。障害が”治る”ことはありません。例えば、足を怪我して歩けなくなった人が、リハビリしたら新しい足が生えてきた、なんてことがあり得ますか?(一時的に歩けなかった人が、足を引きづりながら(不自由を感じながら)また歩けるようになる、といったことはあり得る。)リハビリというのは、障害を背負って、その障害の影響をを軽くして生きてゆく術を学ぶ場なのです。