- 作者: 小坂井敏晶
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: 単行本
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私は、この本を書くために生まれてきたんだと思う。
と、これまたたいそうなことを言ってたことがあったと記憶してるんだけど、本書も同じくらい価値のある本だと思う。本当は、購入して手元に置いておきたいんだけど、専門書*1だから、ちとお値段が…*2あとまぁ、読んでて非常に疲れます。どんなにいい気分で読み始めても、いつの間にやら眉間*3に皺*4が寄ってきて、気がついたら何やらこんな人になってしまいますね。(オラ男だけど。)
ま、それはともかく、本書は、近代を貫く思想―人間は主体的存在であり、自ら選んだ行為に責任を持つ、という考え方が、実は虚構(あるいは、共同幻想)にすぎない、ということを、丹念に解き明かしてゆきます。
Amazonの著者略歴によると、筆者は心理学のセンセイだそうだ。なんか文体などから、法学のセンセイか、と思ったんだけど、違うんだね。
まぁ為になることがいろいろ書いてあるので、機会があれば是非読んでみて欲しいんだけど、例えば、
官僚制最大の特徴は作業分担だ…が、作業分担が責任感を希薄にし、最終的な結果に対して責任を持つ人間がいなくなる。
など、なるほどね、ということがいろいろ載ってます。
とは言っても、本書のような考え方は一般社会で流布している常識とは違うんで、そのまますんなりと受け入れられる、とは思えませんけどね。*5例えば本書の中でも考察していましたが、(第二次世界大戦の)戦争責任にしても、枢軸国側にだけ責任があるわけではないんだから、と言ったところで、ユダヤ人やアジアの人々がすんなり受け入れてくれるとは到底思えませんからね。被害者側の気持ちを考えれば、このようなことは口が裂けても言えません。
ただ、本書が明らかにしていた、
想像以上に人間は状況に強く影響される存在である
という考え方は広く認められてほしい、と思います。