た-くんの狂人日記

最近はほぼ読書日記

ウェブ人間退化論

ウェブ人間退化論―「社会のIT化」は「サル化」への道!?

ウェブ人間退化論―「社会のIT化」は「サル化」への道!?

著者の正高さんは、昔僕が学生だった頃にいくつか講義ももっていたはずなんですが、その頃はまだそれほど有名ではなかったので(講義が面白いらしい、という噂はあったと思う)、受講したかもしれないけど残念ながら特別印象には残っていません。
本書は、冒頭では、人間とアカゲザルのDNAが95%一致する(チンプ*1とは99.7%一致)から、有意水準5%の検定をするなら、人間とアカゲザルが同じになってしまう、なんてふうに、なかなか霊長類の学者らしい面白い書き方をしていたのですが、後半はこれまでの著作(まぁ、本棚探したところ僕が読んだのは、「ケータイをもったサル」
ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

「考えないヒト」
考えないヒト - ケータイ依存で退化した日本人 (中公新書 (1805))

考えないヒト - ケータイ依存で退化した日本人 (中公新書 (1805))

「他人を許せないサル」
他人を許せないサル―IT世間につながれた現代人 (ブルーバックス)

他人を許せないサル―IT世間につながれた現代人 (ブルーバックス)

の三冊に過ぎないようですが。)と同様に、過度のIT機器に依存した生活への警鐘を鳴らす、といった感じの主張に止まってしまった感があったのは残念でした。
現代社会ではいろいろなことがスイッチ一つで出来てしまう方向に進んでいるからこそ、例えばサルに車の運転をさせてみて、どの程度出来るか実験してみる、なんていうことをしてみたら正高さんらしい面白い著作になったんだろうけど。
そんな訳で、僕個人の考えとしては、Webがここまで生活に密着した社会が出現して、まだたかが十年経つか経たないか、ってとこなんだから、今の段階で「進化」だの「退化」だの言い出すのはちと早過ぎるんではないかなぁ、といったところでしょうかね。

*1:チンパンジーのこと。