た-くんの狂人日記

最近はほぼ読書日記

科学と宗教

科学と宗教 合理的自然観のパラドクス

科学と宗教 合理的自然観のパラドクス

題名に惹かれて市立図書館から借りてはきたものの、内容はさすがにごっつくて、ほとんど拾い読みでした。*1
科学と宗教というと、対立的な概念と捉えられがちですが、本書では全体として両者は互恵的に関わってきた*2、という立場で歴史をひもときながら論説しています。
「自然は数学の言葉で記述されている」と最初に言ったのは、ガリレオ・ガリレイらしいですな。
で、本文から引用しますと、

二十世紀は西洋社会が長い時間をかけて、脱改心ともいわれる文化の再構築を図り、神無しに生きることを学んだ決定的世紀である。

と言えるそうで、まぁ、それはそうなんでしょう。一方で、科学技術の進歩はhttp://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/07/06071108.htmのような微妙な問題を生じさせた訳で、これなんかも、聖書では、

汝、殺すことなかれ。

と言っている一方で、

親は子の幸福に重い責任を負うべし

と説いているわけです。結局のところ、宗教に頼るのみでは限界があるんですよね。
だから、いわゆる○○原理主義は危険なのですが、本書で指摘していたのは、世の中が複雑になり、不穏で不確かな時代になったからこそ、(単純に考えられる)原理主義の台頭を許してしまっている、ということでした。*3
遺伝子に関して一つ付け加えるならば、遺伝子は我々の行動を決定しているのではなくて、我々の行動に制限を課している、との見方が紹介されてました。
面白かったのは(これに惹かれてわざわざ借りてきたのですが。)、あとがきに書かれていましたが、科学者の約四割が神や死後の世界を信じているんだそうです。つまりは、一般の人とそんなに大きな違いはないんだそうです。これは、十年ほど前の調査でも80年前の調査でも大差なかったんだとか。科学技術が進歩しているはずなのに、人間の心はそんなに変わってない、ということでしょうかね?
あと、ダーウィンの適者生存の法則も、生物学的に、というより、社会・政治的に利用されることが多いんだとか。
まぁ、チト読み応えがありすぎて気軽に読むわけには生きませんが、たまには良いかもね。年末だし(って、オラは毎日が日曜日だけど…orz)*4

*1:まぁ、図書館の本だから、それでも良いでしょう。これが、自分で買った本なら全部読まないとMOTTAINAIけど。

*2:しかもその境界は、時代とともに変わってきた、と言えるそうです。

*3:でも、こういう原理主義的な脊髄反射は危険ですよね。

*4:ただ思うのは、こういうテーマを日本人が新書くらいの分量で書いたらどうなるのかなぁ、ってことです。著者が欧米だと、キリスト教という一神教の影響は避けられないわけで。下村さんあたり、ヒマができたら書いてくれんかなぁ?